好きなものは好きなんです。

好きなものを好きという、簡単で難しいこと

【大倉忠義】関ジャニ∞という舞台俳優②


大倉忠義主演

『蜘蛛女のキス』





大倉忠義さんと渡辺いっけいさんの二人劇『蜘蛛女のキス』。原作は海外作家の小説で、以前岡本健一さんも演じられたということ。

内容を知り「うわぁこりゃまぁディープで凄い世界だこと」なんて思いましたが、実際見てみるとぎゅっと胸が苦しくなるような作品で最後はボロボロと泣いていました。深い、こりゃまた深い。



正直最初はよく分かりませんでした。映画の話をいっけいさんが演じるモリーナが毎晩のように話すんです。大倉くん演じるバレンティンは反抗的で、なんやこれ???ってなっていたのですが、徐々に状況が読めてきて、映画とモリーナとバレンティンがリンクして苦しくなる。


気持ちが向き合っているがその軸はズレていて、こんなにも愛は苦しいのかと思いました。Twitterでは「セックスした」「キスした」「喘いだ」。ファンからすれば悲鳴を上げたくなるほどのシーンで分からなくはない。目の前に座っていた少女2人とその隣にいたオバサマもそれらのシーンの時は背もたれから背を離し、前のめりで見ていた。熱が入るのもわかるが、頼むからやめてくれ。舞台を見る時は背もたれにもたれててくれ。と願ったりもしたが、とにかくTwitterで言いたくなるのもわからなくはない。



しかし、その言葉だけで片付けてしまうには勿体ないほど深い世界があると思う。見ていないとわからない世界なのかもしれないが、もっと深い。涙が出るほど苦しい世界だ。鳥肌が立つほど素晴らしい演出で、熱のある役者がいる。それほど素晴らしい舞台だと思う。

 


ちょこっと齧っていたが、演劇をやるのはエネルギーがいる。集中し、役として物語の中にある伝えたいことを客席に見せる。観客にそれを受け取ってほしいと願う。だから私は観客として見る時は中身を見ようと思う。役者という器ではなく中身。だから役ではなく、本人として見てしまうのは何だか違う気がする。結論としては本人なのだけど、せっかくならば役者が汗水流して作った伝えたいものを受け取りたいと私は思う。もし何かこれから見る人がいたら、役者も見てほしいが、作品としても見てほしい。うるさいただの演劇の独り言だと思って下さって大丈夫ですが、何となく思い出したら考えてみてください。

 

 


さて、話を戻そうか。この舞台は横ちゃんの舞台と比べると静かだ。静寂の舞台。それは役の気持ちを表す武器だと思う。特にいっけいさんはその使い方が上手い。手先の動き、目線、表情、口調。間が死なない。その間から何かを感じる。

喋ればまるでそれは女性。いや、女性というとスッキリしない。なんと言えばいいのかと考えてみた。モリーナという結論が1番腑に落ちた。モリーナがそこにいる。私はこの作品ではモリーナに主軸を置いて見ていた。だから苦しくなったのかもしれない。
彼女の心情が暴れる度に私も暴れる。「あなたが好きだから」「聞きたくない」「キスして」一つ一つの言葉が刺さる。


対して、大倉くん。彼はこんなにも綺麗な演技ができる人だったんだなと驚いた。この物語中、バレンティンの心情変化は激しい。モリーナは秘めた感情の出し入れが素敵だが、バレンティンは物語に大切な心情の変化が素敵だ。荒れた演技にはトゲがあり、落ちた演技には悲しみがあった。申し訳ないという気持ちには罪悪感がある。こんなにも丁寧に感情を表せるんだと驚いた。

 


また、時々“大倉くん”が見えた気がした。今笑ったそれはきっといつもの大倉くんの笑顔なんだろうと表情がはっきり見えないが、そんな感じがした。いい大倉くんが見える瞬間があったから、もしかしたら彼の演技は自分という底の部分が強いのかなとも考えた。答えは彼しか知らない。いや、もしかしたら彼すらも知らないなかなか楽しい考察だ。


この舞台で印象に残っているシーンはモリーナが自分のことは後回しにして明るく振る舞い、バレンティンと共に朝食を取ろうとするシーン。バレンティンは何も見返りを求められない優しさに怯えて食事をひっくり返してしまう。

荒れた感情の後にハッとして子犬のような「ごめん、本当にごめん」という彼の誤りと彼女の笑顔がなくなる瞬間。



また、ラスト。モリーナが牢から出ることが決まるとずっと「仲間に連絡してくれ。君には被害は行かない」と言っていたバレンティンモリーナはそれをずっと拒否していた。だが、モリーナが牢獄を出る時「(仲間の)番号を教えて」という。バレンティンは喜びキスをし、強く抱きしめるシーン。

私にはモリーナが覚悟を決めた瞬間であり、気持ちが完全には向き合っていないと感じた。

 


どちらのシーンもズレが苦しい。先程から言っているが本当にズレが苦しいのだ。このズレをどう捉えるか、どう思うかをきちんと見たいため、原作を購入しよう。そして、その後に買ったパンフレットをゆっくり見ようか。

 

 

 

アイドルでもある大倉忠義という役者さんの成長がこれから楽しみになるような作品でした。

 

 

 

 

 ▽ 余談

私の席は幸運ながら関係者席に近くてその日は佐藤二郎さんや横ちゃん、ジャニーズWESTの濱ちゃん、神ちゃんがいらっしゃった日でした。ちらっと拝見させていただいたのですが、皆様お顔がお綺麗すぎてただでさえ酷いのにぼろぼろ泣いた私の顔とは天地の差。悲しみを感じました。

 

また、舞台が終わり気が緩んだのか、それとも横ちゃんと目が合って気が緩んだのか。カーテンコールで「アデュー」と言うかのように人差し指と中指を目尻に立ててひょっとして去る大倉くんは最高にアイドルでした。